その家は誰のもの?-所有者調査

 一般的に、不動産を手に入れた際には、不動産登記がされ不動産登記簿には所有者が表示されます。
 なので、不動産登記簿を見れば、その不動産(土地・建物)の所有者を推しはかることができます。
 でも、登記簿に載っている人が、本当の所有者かどうかを決定することはできません。
 それは、日本の不動産登記制度は、登記簿に掲載されている内容が本当かどうかまでは、保証していないからです。

物件調査-登記簿確認と本人確認

 それでも、不動産登記簿に載っている所有者は、ほとんどが本当の所有者です。
 不動産登記を申請するときに、自身で行う方は滅多におらず、司法書士に依頼して不動産登記を行うことがほとんどです。
 司法書士が不動産登記を行う際には、その登記を申請する原因、例えば「売買」とか「相続」とかの原因を「登記原因照明情報」という書類を付けて法務局に申請することになります。
 この際に司法書士は、売買の場合であれば、売主さんと買主さんに売買の事実を確認した上で登記を行うことになります。
 なので、もし売主と買主が一緒になって司法書士を騙し登記移転をさせたのであれば、登記簿上の所有者と本当の所有者は一致しないということになりますが、そうでなければ、登記簿上に載っている所有者が本当の所有者であるということになります。

 司法書士が登記を行う際には、前出の登記原因の確認を、(売買の場合)売主と買主に対して行うわけですが、それだけでなく、売主と買主が本人で間違いがないかどうかの確認も行います。
 もし、本当の売主ではない人が売主になりすまして「買主さんに売りました」と言い、それを信じて登記を行ってしまうと、本当の所有者からしたら、不動産を盗まれたということになってしまい、専門家である司法書士に責任が及びますので、司法書士は本当に本人なのかということを確認する必要があるのです。
 司法書士の本人確認は、通常は運転免許証やパスポートなどの写真が貼られた公的書類の確認を行い、書類には、売主の実印と印鑑証明書を添付してもらいます。
 買主にも、本人確認はしますが、実印や印鑑証明書の添付は買主は不要なのです。
 売主の立場では、不動産を失う訳なので被害を受けることになるので慎重ですが、買主は不動産を所有することになるので、被害は大きいとは言えないからです。

 不動産仲介業者も、売主さんから売却依頼を受けた際には、登記簿で所有者の確認と写真付き公的書類での本人確認は行います。
 危険なのは、不動産仲介業者を通さず、司法書士にも依頼せずに登記申請をしてしまうという(個人売買などの)ケースです。

 不動産登記簿には、必ず所有者が誰かというのは、表示されています。
 でも、その所有者がいない場合もあるのです。
 「架空の人?」
 いえ、そうではなく、所有者としての登記をしたときにはいたのですが、今はいないという場合。
 そう、既に亡くなった人の名義になったまま、相続後の登記をしていないケースがあります。

 こういうケースは、結構多いです。
 価値の大きな不動産の場合には、相続が行われ、財産分与が行われて相続登記がなされるというのが一般的ですが、あまり価値の大きくない不動産を残して所有者が亡くなったケースや、ご主人が亡くなっても奥さんや家族が、その家に住み続けているケースなどなど、特に家を売ったりするつもりはない場合などは、相続登記を行わずに、登記簿は亡くなった元所有者のままになっている、というのはよくあります。

 こうした不動産を購入する場合には、まずは相続を行い不動産を相続した相続人名義で(単独でも複数でもOKです)相続登記をしてから、実際に生きている人に所有権が移されて、その所有者が売主となって売買を行うということになるわけです。
 この相続がすんなりと行われる場合には、そんなに問題は無いのですが、スムーズな相続が行われなかった場合には、相続登記ができず、売買が進まないということにもなります。

 不動産所有者が亡くなって、相続が発生しても、特に売ったりするつもりはないから相続登記は、そのうちにしたら良い。
 なんて思っている人は、ちょっと待ってください。
 何代にもわたって相続登記をしてこなかった不動産の場合、相続の権利者は、当初は奥さんと子ども二人だったものが、子どもが成長して孫が二人ずつできたとしましょう。
 そして、その子供が成長して、さらにひ孫が二人ずつできたとしましょう。
 そして時が経ち、父親世代以前の全員が亡くなった場合、不動産名義人からみると、子・孫・ひ孫の3世代目になったときまで相続登記がされなかった場合、相続権者が8人となってしまいます。
 そうなってから、いざ売ろうと思っても、その相続人8人全員が売ることに同意しなければ、その不動産を売ることはできないのです。
 8人の中には、思い出がある田舎の家だから手放したくないとか、売るより貸した方が良いという人や、なかには行方不明になっている人がいるかもしれません。
 行方不明者がいるとすれば、その人を探し出して相続を行うか、不在者財産管理人の手続きを行ったりする必要があり、とても大変なことになります。
 結局、どうすることもできずに、そのまま放置、空家になり、固定資産税だけを払い続けている。
 なんて話は、実際にあちらこちらにあります。
 
 そうならないためにも、相続が発生したら、すみやかに財産分与を行い、不動産の相続人を確定させ、相続登記を行うことをお勧めします。
 そうすれば、売るのも貸すのも、大規模修繕をするのも、単独もしくは少数の相続人のため、話がまとまりやすく、うまく処分や活用ができるからです。
 それだけが理由でなく、2024年4月からは、不動産の相続登記が法律で義務化されます。
 相続から3年以内に、相続登記をしないと、10万円以下の過料を支払わなければならなくなるのです。
 なので、売る売らないにかかわらず、まだ相続登記ができていない不動産は、早くに相続登記を行うことをお勧めします。

 尚、土地に係る相続登記費用が安くなる(登録免許税が免税されるため)ケースもありますが、それも期限が決まっています。(令和7年3月31日まで)
 相続人が多くいる場合には、登記の準備に時間がかかりますので、期限まではまだまだ先などと思わずに、早めに対応される方が良いですよ。
 <法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について>


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